内容紹介
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「たったひとりでいい、
あなたのことをほんとうに
わかってくれるひとがいれば、
あなたは生きていくことができる――」
日本の臨床心理学の礎を築いた河合隼雄氏。
愛弟子として40年以上にわたり薫陶を受けてきた著者。
その著者が幾多の人々の相談に応じてきた臨床経験を
もとに綴った感動と衝撃のノンフィクション。
・ ・ ・
「いまから母を殺しに行きます」
やや上気した表情でわたしにそう告げて、
バッグからナイフを取り出し、この女性は立ち上がった。
向かいに座るわたしを見下ろし、「いいですね」、と。
何もいえなかった。
これまでなんどもなんども、くり返し、
母親への憎しみを語ってやまなかったこの女性の
こころの内を慮ると、応えることばがなかった。
「やめなさい」などとはよもやいえなかった……
・ ・ ・
そんな衝撃的なエピソードから本書は始まる。
私たちは、与えられたこの人生をどう生きればよいのか――
この答えなき問いを著者は、
脳性麻痺を患ったこうちゃんから教えられたこと、
ハンセン病者との出会いを通じて「生きがい」を探究した
神谷美恵子氏の著作に学んだこと、
そして自ら臨床の手ほどきを受けた河合隼雄氏との対話など、
幾多の事例を紹介しながら模索していく。
その他にも、
「人間であることのかなしみ」
「こころの内なる声を聴く」
「わたしとは何者か」
など、著者ならではの視点で
〝人はどう生きればよいのか〟が語られる。
本書には、様々な境遇の人々から寄せられた
生の記録が収録されている。
問題の解決策が載っているわけではない。
しかし、本書を読むと
心が温かくなり、安心感が得られるのはなぜか。
それは、
「悩んでいるのは、頑張っているのは自分だけじゃない」
そう思える感動と衝撃の読書体験が待っているからではないだろうか。
ぜひ一読し、日々を「生き抜く」糧にしていただければ幸いです。